第三回東京講演会レポート
- 2月8日
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人間塾第12期生 佐々木果音
(国際基督教大学大学院)
去る2026年2月9日、第3回東京講演会が開催されました。芯まで冷えるような風が吹く一方で、晴れやかな陽光にも恵まれた当日、会場には多くの参加者が集いました。
講演では、仲野塾長より、「風の時代」を生きるとは具体的にどういうことかについて、多くの例を交えながらお話しいただきました。これからの時代において、生き方の主眼は、大きな流れとして「所有」から「関係性」へと移行していくそうです。従来の社会では、資産や肩書、組織、資格といったものに依拠し、安定性が重視されてきました。しかし今後は、情報や知識、人とのつながり、信頼といった目に見えない要素を通じて、「どのようにつながっているか」がより重要になるとのことでした。

これまで、積み上げることによって安定性が維持され、管理されてきた社会は、次第に流動性を帯び、変化の速度も一層速まっていきます。また、独占することよりも、共有することに価値が置かれるようにもなります。安定性の象徴の一つであった終身雇用は、プロジェクト型へと移行し、目的に応じて人々が柔軟に関わるキャリア形成が一般化していくと考えられます。さらに、かつては一度獲得すれば十分とされていた学歴についても、学び続ける力、すなわち生涯にわたる学習の姿勢が重視されるようになります。学歴はもはや「所有するもの」ではなく、「更新され続けるもの」として捉えられるのです。目に見える物質的な価値や一時的な成果にとどまらず、不可視的で長期的、かつ複雑なものへと意識を向けていくことが、これからの時代には求められているということでした。

したがって、キャリアにおいては、いわゆる「正解ルート」が成立しにくくなり、その代わりにナラティブ(物語)型キャリアが主流になるそうです。塾長はこのキャリア観を「自身の人生や経験をナラティブとして意味づけながら形成していくもの」と説明され、「単なる職歴の積み上げではなく、自身の体験・価値観・転機・葛藤・選択をストーリーとして再解釈しながらキャリアを築いていくこと」が重要であると述べられました。

私自身、キャリアについて考える中で、先が見えないことに不安を覚え、その焦りから、存在しないはずの「正解ルート」を求めたくなることがあります。しかし、「どのようにつながっているか」が重視される社会においては、更新され続ける状態を受け入れ、自らの経験を意味づけながら再解釈していく姿勢が不可欠です。すでに始まっている「風の時代」を、どのように生きていくのか。いかなる風が吹こうとも流されることなく、自らの足で立ち、自分自身のキャリアを切り拓いていけるよう、今後も精進していきます。



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